空室率はわずかに改善が2カ月連続
三幸エステート株式会社(以下、三幸エステート)は11日、2024年2月度の東京都心5区と全国6大都市の大規模ビルに関するオフィス市況をまとめたマーケットデータの公開を開始した。この調査における東京都心5区とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を指し、大規模ビルは1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビルを指す。
「空室率」は貸付総面積に対する現空面積の割合であり、「潜在空室率」は貸付総面積に対する募集面積の割合で、既存ビルのテナント退去前を含む募集床が対象になっている。募集面積は、各統計日において公開されているテナント募集面積で、統計開始日は1994年1月1日である。
オフィス市況に影響を与えるマクロ経済動向をみると、2023年10~12月期の実質GDP成長率は、内閣府発表で2四半期連続のマイナスになった。主に国内需要の減少が影響している。ニッセイ基礎研究所では、今後3年間の実質GDP成長率について、2023年度を1.2%、2024年度を1.0%、2025年度を1.1%と予測しており、当面は年率1%台の緩やかなプラス成長になる見通しだ。
総務省の労働力調査による2024年1月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下し、2.4%とやや改善した。厚生労働省から発表される有効求人倍率は前月から横ばいであったが、その先行指標とされる新規求人倍率は前月より上昇、改善傾向になった。宿泊・飲食などの対面型サービス業で増加が継続されている。ただし、新規求人数は減少に転じているという。

本社移転などにより比較的大口の空室が消化されたほか、複数の大規模ビルが高稼働で竣工を迎え、空室率が改善してきているとみられる。潜在空室率は7.42%で、前月に比べ0.18ポイント低下、前月は上昇していたが、再び低下して昨年末の水準に近づいた。

募集賃料は28,000円台を回復
2024年2月の東京都心5区大規模ビルにおける募集賃料は、共益費込みで月額坪あたり28,025円となり、前月に比べて61円上昇した。3カ月連続の上昇で28,000円台を回復したものの、その上昇幅は小さく、横ばい傾向が続いている。引き続きリーシング活動が長期化しているビル物件や、大口の募集床を抱えたままとなっているビル物件では、テナント誘致を目的とした賃貸条件の見直しやキャンペーンが積極的に実施されているという。
募集面積は合計で639,328坪になり、前月に比べて5,834坪減少した。

成約面積が前年比プラスで推移したことについて、三幸エステートでは、建築中ビルでの成約が前年より増加したことが背景にあるとしている。経済活動の活発化に加え、大量供給がオフィスニーズを刺激したとも分析した。
一方で、昨年は20万坪超とまとまった供給量があったが、それに対して期待されたほどの成約面積の伸びとはならなかったため、今後、需要がさらに活性化するかどうか注視される状況だともしている。
(画像はプレスリリースより)
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202403_tokyo_om.pdf