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認知症高齢者の保有不動産、2040年には約108兆円規模に

2022/3/27 03:00

認知症高齢者が保有する資産の問題が深刻化
三井住友信託銀行株式会社(以下、三井住友信託銀行)は23日、自社で独自に推計した全国の認知症高齢者が保有する「資産総額」、「金融資産」、「不動産」に関する調査結果を発表した。

日本銀行の「資金循環統計」や総務省の「全国化傾向増調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業報告書などを基に、三井住友信託銀行調査部で分析を行ったとしている。

認知症高齢者が保有すると推定される資産額は、高齢化の進行とともに増加傾向にある。認知症を発症すると、それ以前のような金融取引や不動産の管理が困難になるケースも少なくない。

後見制度や信託などで資産を引き出せるように準備しておくことが備えとして有効だが、そうした措置がとられないまま自由に動かせない資産となっていることが多く、社会全体でも大きな問題となってきた。

今回の調査結果によると、認知症を発症した高齢者が保有する金融資産と不動産を合わせた総資産額は、2020年で252.1兆円と推計された。

また、この額は今後も増加を続け、2030年には314.2兆円、2040年には345.0兆円になると予測されている。

内訳では、金融資産の場合、全国の認知症高齢者が保有するのは2020年で172.2兆円、全国合計に占める割合にして8.6%、2030年では214.1兆円で11.0%、2040年では237.3兆円で12.9%となった。

住宅と土地を合わせた不動産の場合では、全国の認知症高齢者が保有するのは2020年で79.9兆円で、全国合計に占める割合が7.4%、2030年になると100.1兆円、9.4%に増加、2040年では107.7兆円、10.8%と1割を超える見通しになっている。

3大都市圏に集中する実質凍結の資産
続いて、都道府県別で認知症高齢者が保有すると推定される資産額と全国に占めるその割合をみていくと、金融資産の場合、2020年では1位が「東京都」で18.9兆円、全国総額に占める比率は10.9%だった。

2位は「神奈川県」の16.3兆円、3位が「大阪府」の12.3兆円、4位に「愛知県」の11.2兆円、5位「埼玉県」の10.8兆円と続く。3大都市圏の合計は99.5兆円で、全国総額に対する比率で57.6%を占めていた。

2040年になると、トップは「神奈川県」に代わり、26.2兆円、比率が10.8%となる。2位は「東京都」で25.0兆円、3位が「埼玉県」の18.2兆円、4位に「大阪府」の17.4兆円、5位「愛知県」の16.9兆円と推計された。3大都市圏合計では146.0兆円にのぼり、全国の60.1%となった。

不動産についてみていくと、2020年ではやはりトップは「東京都」で、認知症高齢者が保有する不動産資産額が25.4兆円、全国総額に占める比率は30.6%と3割を超えている。

2位は「神奈川県」の8.9兆円で、3位は「愛知県」の5.1兆円、4位「大阪府」の5.0兆円、5位が「埼玉県」の4.7兆円だった。こちらは3大都市圏合計で59.9兆円となり、全国総額に占める割合は72.1%と金融資産以上に集中する傾向がみられた。

2040年になると、1位は「東京都」で変わらず33.6兆円、全国の総額に占める比率は2020年よりわずかに低下し、29.8%と推計されている。2位は「神奈川県」で13.0兆円、3位が「埼玉県」で7.4兆円となった。

以下4位に「愛知県」の7.1兆円、5位に「大阪府」の6.5兆円となる。3大都市圏合計は82.1兆円で、その全国総額に占める割合は72.9%となった。

2020年から2040年にかけての増加率で集計・分析すると、金融資産の場合、「埼玉県」が最も高く68.4%を記録する。2位が「神奈川県」の60.6%、3位は「沖縄県」で52.3%となった。4位には「滋賀県」の51.0%、5位に「愛知県」の50.3%となる。

不動産の場合では、1位が「沖縄県」で58.5%、2位は「宮城県」の56.4%、3位に「埼玉県」の55.9%となった。4位は「神奈川県」で46.4%、5位「栃木県」の45.9%と推計された。

増加率でみると、大都市圏以外の地方圏も上位に目立つようになっている。とくに今後予想される高齢化の加速傾向が激しく、認知症高齢者数の増加率も顕著に高まると考えられるエリアが上位に該当しているとものとみられた。

占有率でみると不動産は島根がトップ
都道府県別に家計が保有する資産額を算出し、その合計に占める認知症高齢者保有の割合でランキング化すると、資産総額では1位が「新潟県」の12.3%、2位に「島根県」の11.0%、3位は「長崎県」の10.6%となった。

4位には「秋田県」の10.6%、5位「山口県」10.1%と続く。トップ5はいずれも1割を超えており、全て高齢化が深刻な地方県である。

内訳では、金融資産の場合、1位が「新潟県」の13.9%、2位は「秋田県」の11.6%、3位「岩手県」11.6%、4位に「島根県」の11.6%、5位は「長崎県」の11.4%だった。

不動産の場合では、1位が「島根県」で9.4%、ほぼ同率の2位に「東京都」の9.4%となる。3位は「宮崎県」で9.1%、4位が「熊本県」の8.9%、5位に「山口県」の8.7%となった。

東京都は不動産の額が高いこともあり、内訳で上位にランクインしたが、総額資産となると金融資産の割合も大きく影響するため、高齢化の進んだ地方が上回るようになったとみられる。

資産総額と金融資産の割合でトップとなった新潟県は、高齢者比率が高いことに加え、高齢層が保有する資産額が県全体でみたとき、相対的に大きい特徴があると考えられた。

(画像はプレスリリースより)

外部リンク

三井住友信託銀行株式会社によるプレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/000000039.000055547.html

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