空室率が2022年2月以来の3%台へ
三幸エステート株式会社(以下、三幸エステート)は11日、最新のオフィスマーケットレポートの公開を開始した。2024年10月度のデータを見ることができる。レポート提供ページからは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区からなる都心5区のほか、東京23区、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の全国6大都市における大規模ビルの市場動向を確認できるようになっている。
この調査における「大規模ビル」とは、1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビルを指す。「空室率」は、貸付総面積に対する現空面積の割合で算出しており、対する「潜在空室率」は、貸付総面積に対する募集面積の割合となる。
「募集面積」は、各統計日時点で公開されているテナント募集面積の合計を示したもので、統計開始日は1994年1月1日である。
不動産市場に影響を与えるマクロ経済動向では、ニッセイ基礎研究所による調査で、内閣府発表の2024年7~9月期実質GDP成長率は、年率プラス0.8%になるものと予想されている。仮にこれが正しければ、2四半期連続のプラス成長となる。
10~12月期においても年率1%程度のプラス成長が予測されているが、物価の高止まりなどで民間消費を中心とした下振れリスクが高く、不透明な状況も続いている。
なお2024年度全体ではプラス0.7%の予想、2025年度はプラス1.1%の予想とされた。
9月の完全失業率は、総務省の労働力調査で2.4%となり、前月より0.1ポイント改善した。また、厚生労働省の発表する有効求人倍率も前月から上昇し改善傾向となっているが、この先行指標となる新規求人倍率は前月より悪化し、低下している。こうした中で女性の就業者数は、2カ月連続の過去最高更新になったという。
2024年度全体の失業率は2.6%の予想で、2025年度は2.4%の予想となった。
空室率が低下、募集賃料も緩やかに上昇
2024年10月度における東京都心5区の大規模ビル空室率は3.95%となり、前月より0.22ポイント改善した。ついに4%を下回る空室率まで改善傾向が進み、2022年2月以来の3%台を記録している。今期はまとまった面積の空室消化が進んだほか、大規模ビルの新規供給がなかったため、空室率の低下につながった。
潜在空室率は5.88%で、こちらも前月に比べ0.15ポイントの低下になっている。6%を割り込み、5%台となるのは2021年1月以来とされる。
募集賃料は月額坪あたり28,796円で、前月より41円上昇、6カ月連続のプラスとなった。およそ横ばい傾向といえる緩やかさだが、着実に上昇基調を続けてきているともいえる。
ただしこの傾向は、立地条件が良好なエリアや募集状況が改善したビルにおいて賃料引き上げのケースが増えていることに伴ったもので、リーシング活動が停滞、条件見直しも迫られるビル物件との二極化が進んでいることも指摘された。
募集面積は513,376坪となり、前月より16,502坪減少、空室消化が進んできていると分かる。
ネット・アブソープションは4期連続で需要超過
調査対象となる一定期間内のテナント入居面積(稼働面積)の増減を示し、需要トレンドの推定指標として重視される、ネット・アブソープション(吸収需要)は、2023年第1~第3四半期まで、都心部での大量供給から供給過剰状態が続いていたが、2023年第4四半期からは4期連続で需要が供給を上回り、需要超過になっている。直近データの2024年第3四半期では、新規供給も伸びてきている中で約7万坪の高水準となり、オフィス需要の力強さが見られるようになった。
三幸エステートでは、オフィス需要の拡大傾向は今後も続く見通しで、年間を通じてもネット・アブソープションが新規供給を上回って需要超過になる可能性が高いとしている。
ただし最寄駅からの距離や利用可能な路線数など、立地条件面に課題のあるエリアではリーシング活動の長期化が続いており、そうした立地条件等に優れないエリアや物件にまで影響するほどのオフィス需要の旺盛さがあるわけではない点には注意が必要ともした。
(画像はプレスリリースより)
三幸エステート株式会社 オフィスマーケットレポート11月号 東京都心5区大規模ビル 公開資料(プレスリリース)
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202411_tokyo_om.pdf
三幸エステート株式会社 データ提供ページ
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